設立者について

設立者の紹介

山田輝郎
(1894-1982)

ロート製薬株式会社初代社長

1920年に家業の「山田安民薬房」を引き継ぎ、
1949年にロート製薬株式会社を設立。
Vロート目薬やパンシロン胃腸薬などのヒット商品を生み出した。
また、山田スイミングクラブ(1965-1973)の
設立者としても知られる。
1977年、私財30億円を寄附して当財団を設立。

私の人生経験を通じて、日本の社会の発展にとって、特に重要と感じた点は、論理性と独創性の重視であります。本来感性にすぐれている日本人は、ややもすれば没論理に走り、又他人の模倣に堕する傾向があることは多くの識者の指摘するところであります。殊に自然科学の基礎的分野においてこれらの点を助長することが基本的に重要であろうと考えました。これが特に「自然科学振興」を目的とする財団として具体化することを考えるに至った動機であります。」

「点試汎行(てんし・はんこう)」
- 狭い範囲(点)でまず試み、良いと思ったことを汎(ひろ)く行う-

「人間の頭でいくら“良い”と思って考えてみても、実際にやってみないとわからない。
思い違いや考えが足らんことがあるかもしれない。頭から“これは良い”と決めてかかるのは危険だ。
だから、狭い範囲で部分的に実験してみる。
それで“良い”とわかったら、次は準備を十分整えて全国的に広くやっていく。それが私のやり方でした。」
(大阪新聞連載「決断 山田輝郎のロマンに賭けた半世紀」より)

民間の財団は、規模は小さくとも未知の領域に大胆に挑むような研究を
支援することで点試の役割を果たし、
有望と分れば大規模な「汎行」的支援を国にお願いする

オーソドックスなものに傾きがちな公的援助に対して、
創造の芽を持ちながらとかく見逃されやすい先進的・学際的研究に手を差し伸べる当財団の方針は、
設立当初から現在まで変わらず受け継がれています。

山田科学振興財団の設立に際して

 人間は「社会的動物」であると云われております。どのような人生を歩むにせよ、人は、小さくは周辺の人々とのかかわり合いを通じて、又大きくは国家的な動きを通じて、おそらくは自身のあづかり知らぬ所でも多くの人々と何らかの絆をもって結ばれているのではありますまいか。

 私は若い頃より父の創始した製薬業をうけついで、50余年にわたり、その経営に努力をして参りました。幸いにして本業は順調な発展をつづけて参りましたが、これも私の人生の道すがら私自身の考え及びもつかぬ所で広く多くの方々の御援助があったからこそであろうと思っております。それにつけましても、得ました些かの私財を有効な形で社会に還元して、これに対する感謝のしるしとしたいと考えました。これが公益財団の設立を考えるに至った第一の動機であります。

 私の人生経験を通じて、日本の社会の発展にとって、特に重要と感じた点は、論理性と独創性の重視であります。本来感性にすぐれている日本人は、ややもすれば没論理に走り、又他人の模倣に堕する傾向があることは多くの識者の指摘するところであります。殊に自然科学の基礎的分野においてこれらの点を助長することが基本的に重要であろうと考えました。これが特に「自然科学振興」を目的とする財団として具体化することを考えるに至った動機であります。

 とは云え、この点については特に国の施策として多額の助成がなされているわけであり、助成の規模のみから云えば、一個人の基金による財団の受けもつべき役割については一考を要するところであります。この点については、次のように考えました。私は事業経営上「点試汎行」という戦略を一つのモットーとして参りました。独創的な新方式を実行する際に、小規模な試行の後に、有効とわかれば大々的に実行するという意味であります。私立の財団には、規模は小さくとも未知の分野に大胆に賭ける、いわば「点試」の役割を期待し、有望とわかれば大規模な「汎行」的助成を国にお願いする、これがその公私の性質上、最も自然で有効な役割分担でありましょう。

 ところで、このような自然科学の基礎的分野の助成という事業は、云う迄もなく短期間に効果を期待できるものでもなく、又すべきものでもないと思います。ことにこの方面について全くの素人である私としては、今後財団の行う諸事業については一切口をさしはさまず、すべてを斯界の第一人者であらせられる理事、評議員をはじめ運営にたずさわられる諸先生方におまかせするのがよいと思っております。

 以上のような考えをもちまして、信頼申し上げる各方面の先生方に、役員その他として御協力をお願い致しましたところ、赤堀理事長はじめ諸先生方には、御繁用中にも拘らず快くお引き受け下さいました。又所管官庁におかれても種々御高配を賜り、ここに山田科学振興財団が発足するに至りましたことは、出資者としてこれにすぎる喜びはございません。何卒今後とも御関係の方々の御尽力によりまして、本財団が益々発展致しますよう念願する次第でございます。

山 田 輝 郎

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