理事長挨拶
理事長挨拶
山田科学振興財団を代表してご挨拶申しあげます。
当財団は、故山田輝郎氏のご浄財ご寄付をもって、1977年に独創的な自然科学基礎研究を支援するため設立されました。爾来、研究助成・学術集会開催・国際共同研究支援を事業の柱として、基礎研究の振興を図ってまいりました。
自然科学分野における基礎研究とは何を指すのでしょうか?
科学の成果とは事実を説明する仮説であり、反証可能であることが必要であるという考え方があります。これまで、現実におきている森羅万象全てを間違いなく説明できる仮説・理論(科学的成果)はありません。その意味で、科学者の営みによって得られる成果がどれだけ普遍的な現象を説明できるのか、その説明可能性はそれぞれの仮説・理論によって異なります。ある成果はきわめて限られた状況下でしか成立せず、時を置いて得られた成果はより普遍的な現象を説明できるでしょう。基礎研究とは何かという問いに対して、さまざまな答があると思いますが、わたしは、以上のような、より普遍的、より「強い」理論を手に入れて世界を理解するために科学者が行う努力が基礎科学ではないかと考えます。従って、基礎科学は、自然界を理解したいという欲求をもつヒトに生まれながら備わり、何世代にもわたって自然科学者によって行われるいつ果てるとしれない営為であるといえます。
残念ながら、国が実施している競争的研究資金は、以前にも増して課題解決を目指した応用研究を主要な対象としております。当財団が自由な発想に基づく基礎研究に特化して助成を行っていることに一層の責任を感じているところです。これからも、老壮青、男女、研究者としてのバックグラウンドなどさまざまな属性をもち、しかし基礎研究に真摯な研究者を支援していきます。みなさまのご支援をどうぞよろしくお願いいたします。
2022年4月1日
山田科学振興財団 理事長
石川冬木