No.26 過ぎしことごと・明日への架け橋 貴財団の援助についての感想

大沢 文夫
元評議員/東京慈恵会医科大学客員教授、愛知工業大学客員教授

 それは昭和53年夏であるから貴財団が活動を始められてまもなくのことになるが、国際生物物理学会議が京都で開かれた機会に、貴財団からの全面的援助によって関西セミナーハウスで生物物理の国際若手夏の学校を開催することができた。これは若い研究者によって企画実施され、内外からの参加者が日夜楽しく議論をかわした。いまも多くの人々がその思い出を語り、その後の国際的共同研究のたねを作ったようである。
 いろいろの分野でいろいろの国でこのような会が開かれるとよいと思うが、他ではどうかよく知らない。
 若い研究者への援助を、ということはよくきくが、いざというと実施されにくい場合が多いのではなかろうか。貴財団は常に若手へということを実行されていて、すばらしいと思う。
 生物科学は最近世の中でしばしば話題となり、日が当るようになってきた。ところが、国の予算までが生物科学の主として応用研究へ流れて行く。ぜひ基礎生物科学へ国からまた民間から強力な支持があってほしいと思う。技術化はわが国で発展した基礎研究に根ざしたものであることが望まれる。
 現在生物科学は点と線のストーリーとしては非常に急速に展開しているが、いざ生物機能のメカニズムの解明となると、問題は極めてむつかしく、研究の進みは決して速いとはいえない。しかし、この難題を解かなければ、生きものについての深い理解は得られないし、生物科学の技術化も便宜的なものになってしまうだろう。難題を解くには研究者たちの個性的な発想による着実な研究の積み重ねによるほかない。そのような研究への貴財団からのなお一層の援助をねがっている。

記念誌「山田科学振興財団の10年」(昭和62年(1987年)2月1日発刊)より
※ 筆者の所属・役職は、執筆当時のものです。